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心音聴診トレーニング「ステップワイズ・アプローチ」10

解説 髙階經和先生(公社)臨床心臓病学教育研究会理事長、髙階国際クリニック院長

筆者が1971年、アメリカ心臓病学会本部に行われた「心疾患の診断における聴診の重要性」というセミナーに参加した。主宰者は当時国際的にも著明なジョージタウン大学医学部のハーヴェイ教授(Prof. Proctor Harvey)であった。

彼がベッドサイド診察における「5本の指アプローチ」(Five finger approach)を唱えていたことは有名である。すでに450名の患者から記録したカセットテープが教育資料として広く全米で使われる程、教育面で多大な貢献をした医学教育者に贈られる「マスター・ティーチャー」(Master teacher)の称号を持つ卓越した医師の1人だ1)

筆者はセミナー期間中に話す機会があったが、彼は絶えず微笑みを浮かべ静かな物腰であった。彼の卓越した講義法は、クラシックの名曲から時にはジャズのスタンダード・ナンバーを取りいれた魅力あふれる講義であり、時の経つのも忘れる程であった。そしてハーヴェイ教授は、机を指で軽くノックしながら肺動脈部位におけるII音分裂を表し、心音や心雑音を口真似で表現する「心音疑似法」(Cardiophonetics)を駆使した講義で参加者たちを魅了した。その後、著者はハーヴェイ教授の講義法を取り入れ、各地の医師会でリズミカルな音楽を参加者に聞かせるユニークな授業を行った。しかし残念な事に1970年代に入ると、心エコー図に代表される画像診断法が医師たちの興味を惹き、患者を綿密に見る診察法の重要性が失われていく寂しい時代となった。

21世紀の今日、最新医療機器は、先人たちの努力によって確立された臨床医学の基礎である「医師と患者」の関係にどういった変化をもたらしたのだろうか?今日の情報社会にあって、人々は過去に築かれた先人の贈り物を軽視し、時には無視しているのではないだろうか?

1)Harvey WP, Canfiled DC. Clinical Auscultation of the Cardiovascular System, High Fidelity recordings of more than 450 actual patients with companion test.1997, Laennec Publishing Inc.


ステップワイズ・アプローチ

1974年に髙階經和先生が録音したカセットテープからご紹介しています。当時神戸大学医学部で臨床診断学を教えていた時代に制作した心臓聴診の解説です。心音・心雑音のトレーニングにお役立てください。

【解説音声】ステップワイズアプローチ18 肺高血圧

肺高血圧を聴診します。S1S2に続いて駆出音、収縮期雑音、拡張期雑音がステップワイズにアドオンされます。

【解説音声】ステップワイズアプローチ19 心室中隔欠損(VSD)

心室中隔欠損の聴診です。S1S2の次に全区間性収縮期雑音や収縮期ダイヤモンド型雑音、拡張中期雑音がアドオンされていきます。

※ステップワイズアプローチは全31症例で構成されています。ここでは18~19を紹介させていただきました。


学術論文抜粋『聴診は必要か?』

(T. Anthony Don Michael, M.D.;Contemporary Internal Medicine:Vo.9,No.12, December 1997)訳 髙階經和先生

肺塞栓

急性肺塞栓を診断するのは、完全右脚ブロックに関連したS2の肺動脈成分(IIp)の幅広い分裂が見られることが重要な鍵となる(注:完全右脚ブロックの場合にも聴かれる所見であるが、心電図によって確認することができる)。これは特に以前の診察時に聴診所見がなかった患者の場合は極めて意味のあることだ。同様に右室性のS3、S4が心尖部で聴かれるKussmaul サインのある場合(吸気によって静脈圧が上昇する)、下壁梗塞を起こしている患者か、右室梗塞を起こしている事を意味する。

心膜炎

聴診は心膜炎を診断するのに最も有効である。2つまたは3つの摩擦音があることで分かる。心膜水腫のある場合、心音はソフトで肩胛骨下に濁音が現れる(Ewart’s sign)。

「収縮期性心膜水腫」では、Broadbent’s signと呼ばれる摩擦音が肋骨の陥凹とともに聴かれる。陽性のKussmaul’s sign(右室性S3、S4)と交互脈が併発していれば、ベッドサイドでの診察により基礎疾患が結核性、がん、あるいは放射線障害によって起こったものであることが分かる。原因不明の腹水がある患者では、胸骨左縁に心膜ノック音が聴かれ、陽性Kussmaul’s sign と交互脈があれば心膜炎と診断できる。UCG とCTスキャンによって収縮性心膜炎の診断が確定でき治療方法が決められる。


オンラインで学ぶフィジカルアセスメント学習システムiPax(アイパクス)

画面に表示された前胸部イラストをアイコン操作で聴診します。アイコンが移動した部位の聴診音が再生され、心音と肺音のON/OFFを切り替えることができます。また、心拍数を変更したり、脈の触診をしながら聴診することも可能です。

iPax紹介ページ


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