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心音聴診トレーニング「ステップワイズ・アプローチ」04

解説 髙階經和先生(公社)臨床心臓病学教育研究会理事長、髙階国際クリニック院長

1993年、Mangioneらは興味あるテストをおこなった。それは医学生やレジデントが12種類の心音・心雑音を同定できる平均値は約20%であり1)、また一般開業医での調査結果は聴診能力は40%であった2)

従来行われてきた心臓の聴診教育での標準的アプローチは、―教育的な講義に続いて短時間の心音のデモンストレーションを行うという(理論的な)方法が取られてきた。しかしそれでは聴診手技を習得する事は難しいという印象を与えてしまう。2004年Barrettらは、51名の医学生を対象に4つの基本的な心雑音と各心雑音を500回聴かせるという研究を行った3)。学生たちはこれ等の心雑音を聴き分ける能力が研修前と後では飛躍的に向上した(17%-80%,p<0.001)。 彼らは更に88名の医学生に対して、6種類の異常心音を500回繰り返し聴かせた結果、彼等の聴診による鑑別能力は著明に向上した(39%-80%, p<0.001)4)

これら2つの対照試験で聴診手技を向上させるためには「限られた時間内での研修ではなく、参加者が積極的に学ぶ認知学習(cognitive learning)を行う」ことが心理学的にも証明されていることを示唆した。Barrettは「反復、反復を繰り返すことが聴診手技を身に付けるためのエッセンスである」と述べている。

筆者は2008年にBarrettとのメールの交信の中で、日本で開発された心臓病シミュレータ「イチロー君」の研修結果、また彼がアメリカ心臓病学会から教育資料として開発したCD-ROM「ハート・ソング」(Heart song)や筆者が作成したDVD「心音・肺音・腹音」5)について意見を交換し、ベッドサイド診察手技の向上には反復する事が最も大切であるという事で意見の一致をみた6)

1)Mangione S, Nieman LZ, Gracely E, Kaye D. The teaching and practice of cardiac auscultation during internal medicine and cardiology training. A nationwide survey. Ann Intern Med. 1993;119(1):47-54.

2)Barrett MJ, Lacey CS, Sekara AE, Gracely EJ. Mastering cardiac murmurs: the power of repetition. Chest. 2006; 126(2):470-475.

3)Barrett MJ, Kuzma MA, Seto TC et al, The power of repetition in mastering cardiac auscultation. Am J Med 2006;119(1):73-75.

4)Barrett MJ, Marinez M, Pieretti J. The Power of Repetition in Mastering Cardiac Auscultation. In:Finley J, ed. Teaching Heart Auscultation to Health Professionals, Method for Improving thePractice of an Ancient but Critical Skill. Vol chapter 4 of 2011

5)Takashina T. Personal communication with Barrett, Sept.2008.

6)髙階經和. DVDフィジカルアセスメントのための心音・肺音・腹音.インターメディカ. 2015.

ステップワイズ・アプローチ
1974年に髙階經和先生が録音したカセットテープからご紹介しています。当時神戸大学医学部で臨床診断学を教えていた時代に制作した心臓聴診の解説です。心音・心雑音のトレーニングにお役立てください。

【解説音声】ステップワイズアプローチ6 駆出音①

駆出音の聴診です。S1S2に続いてクリック音がアドオンされます。増大した血液が大動脈や肺動脈に駆出されたときに発生する音がクリック音です。

【解説音声】ステップワイズアプローチ7 駆出音②

駆出音の聴診です。肺動脈クリック音、大動脈クリック音を説明しています。

※ステップワイズアプローチは全31症例で構成されています。ここでは症例06~07を紹介させていただきました。

学術論文抜粋『聴診は必要か?』ー心不全ー

(T. Anthony Don Michael, M.D.;Contemporary Internal Medicine:Vo.9,No.12, December 1997)訳 髙階經和先生

心不全はしばしば聴診所見によって知ることが出来るが、それは収縮期不全や拡張期不全かを鑑別することが出来るからである。うっ血性心不全、所謂「ポンプ失調」の重要なサインは、肺野における湿性クラックル音と交互脈(alternating pulse)であり、聴診でS2が大きく・小さく交互に聴かれることによって知ることができる。現在では、殆どの病院のCCUで心腔内カテーテル法によって診断しているが、正確な診断をつけるためのルーティンにこれらの検査を行うことは論理的にも経済的にも妥当ではない。


オンラインで学ぶフィジカルアセスメント学習システムiPax(アイパクス)

画面に表示された前胸部イラストをアイコン操作で聴診します。アイコンが移動した部位の聴診音が再生され、心音と肺音のON/OFFを切り替えることができます。また、心拍数を変更したり、脈の触診をしながら聴診することも可能です。

iPax紹介ページ


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